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One Summer Day

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 「行こう、あの頃の幻想郷。」

そう言って手を差し伸べてきた君は、お面を被って新たなる世界の扉を開けた。宵空にはカラフルなキャンディをぶちまけたような火花。蝉の声が遠く聞こえていた。今はもう遠い、君がいたあの夏。

 

Dream Festival

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 遠くに鳴り響いている祭囃子の音を、喧騒が消し去った。僕はただ、水の中に漂う灯を追いかけていた。灯はいつか、消えてしまうもの。「そんなこと分かってるよ」と笑ったのは、何も知らなかったから。夏よ、永遠に。

A town in Twilight

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  夕闇迫るどこかの街に迷い込んだら、君に逢えた。この時がずっと続きますように、と胸に隠した思いは、私の心を締め付けた。夕暮れの街、黄昏の時。海鳴りが聞こえて、空想から覚めると、君はもういなかった。いつかの青い春。



 

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     『罪人』

               ◇◆

 

チック、タックと時間が流れていく音だけが聞こえている。

 

静まり返った部屋、ひんやりとした空気。

 

張り詰めたその空間で、罪人は一体何を考えているのだろう?

 

…止まることを知らぬ時の中で。

 

刻々と迫る死刑執行に、彼は動じなかった。

 

ただ、心の中に住みついた、蔓延る虚無感と孤独感だけに踊らされて。


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  『天ノ弱』

         ◇◆

 

廃墟と化した夢の跡にて、君想う。

 

前に進む君と、時間が止まった僕。

 

僕を乗せた回転木馬は、永遠に同じ道を辿る。

 

…それなのに、僕は呟く。

 

「君の名前さえ、忘れてしまったよ。」

 


 

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  『月の雫』

       ◆◇

 

ぽたり、月から落ちてきた雫。

 

これで何度目のさよならだろう?

 

魔法が解けたら、そこに待っているものは――。

 

ただ、時間は過ぎ行くし、星は廻る。

 

叶わない理のあることを知った、小さな月。

 

 


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  『水葬』

      ◆◇

 

ある冬のこと。その冷たいモノは、海の彼方へと沈みゆく。

 

ただ、そこにあるのは、孤独への絶望と苦しみ。

 

笑っていたかった最期。

 

それなのに、彼が残した言葉はぽつり、「さようなら、青春。」。

 

あの頃の情熱、淡い日々、そして、自分自身にさえも――。

 

 


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  『夢幻』

      ◆◇

 

はらはらり、舞っている幻。朧げな月。どこまでも続く鳥居。

 

ふと気づけば、そこは夢うつつの世界。

 

「皆には、内緒だよ。」

 

そっと手を引かれ、ふわふわしているのに、どこか不気味な深紅の世界へ。

 

ぐる、ぐるり。ふわ、ふわり。へんてこなステップを刻む。

 

「深入りしちゃ、いけないよ。」

 

そう言った彼が、仮面の下でぱちくりウインクした気がした。