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「行こう、あの頃の幻想郷。」
そう言って手を差し伸べてきた君は、お面を被って新たなる世界の扉を開けた。宵空にはカラフルなキャンディをぶちまけたような火花。蝉の声が遠く聞こえていた。今はもう遠い、君がいたあの夏。
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遠くに鳴り響いている祭囃子の音を、喧騒が消し去った。僕はただ、水の中に漂う灯を追いかけていた。灯はいつか、消えてしまうもの。「そんなこと分かってるよ」と笑ったのは、何も知らなかったから。夏よ、永遠に。
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夕闇迫るどこかの街に迷い込んだら、君に逢えた。この時がずっと続きますように、と胸に隠した思いは、私の心を締め付けた。夕暮れの街、黄昏の時。海鳴りが聞こえて、空想から覚めると、君はもういなかった。いつかの青い春。
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『罪人』
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チック、タックと時間が流れていく音だけが聞こえている。
静まり返った部屋、ひんやりとした空気。
張り詰めたその空間で、罪人は一体何を考えているのだろう?
…止まることを知らぬ時の中で。
刻々と迫る死刑執行に、彼は動じなかった。
ただ、心の中に住みついた、蔓延る虚無感と孤独感だけに踊らされて。
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『天ノ弱』
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廃墟と化した夢の跡にて、君想う。
前に進む君と、時間が止まった僕。
僕を乗せた回転木馬は、永遠に同じ道を辿る。
…それなのに、僕は呟く。
「君の名前さえ、忘れてしまったよ。」
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『月の雫』
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ぽたり、月から落ちてきた雫。
これで何度目のさよならだろう?
魔法が解けたら、そこに待っているものは――。
ただ、時間は過ぎ行くし、星は廻る。
叶わない理のあることを知った、小さな月。
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『水葬』
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ある冬のこと。その冷たいモノは、海の彼方へと沈みゆく。
ただ、そこにあるのは、孤独への絶望と苦しみ。
笑っていたかった最期。
それなのに、彼が残した言葉はぽつり、「さようなら、青春。」。
あの頃の情熱、淡い日々、そして、自分自身にさえも――。
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『夢幻』
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はらはらり、舞っている幻。朧げな月。どこまでも続く鳥居。
ふと気づけば、そこは夢うつつの世界。
「皆には、内緒だよ。」
そっと手を引かれ、ふわふわしているのに、どこか不気味な深紅の世界へ。
ぐる、ぐるり。ふわ、ふわり。へんてこなステップを刻む。
「深入りしちゃ、いけないよ。」
そう言った彼が、仮面の下でぱちくりウインクした気がした。
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